| それでは、どうして空気ではなくナイトロックスを使うのでしょうか?ここでは、オープンウォーターダイバー程度の知識があるものとしてご説明させて頂きます。
ご存知のようにダイビングのように圧力が増した環境で呼吸を続けると、窒素や酸素などの気体が体内の血液中に溶け込みます。その中で酸素は代謝によって消費されるのですが、窒素は血液中にとどまります。長時間潜れば、また深く潜ればそれだけ血液中の窒素は増えていきます。
次にダイビングを終え浮上を開始すると、体にかかる圧力は少しずつ減っていきます。そうすると血液の中に溶け込んでいる気体は少しずつまた元の状態にもどろうとしていきます。肺の中で血液は、溶けている気体を呼気の中に拡散させていきます。
血液に溶けている窒素の量が少ない場合や圧力変化が小さい場合は、少しずつ気体を拡散させていくので何の問題も起こりません。ダイビング中の深度と時間から血液の中に溶けている窒素の量を計算し、いつでも減圧せずに安全に浮上できる範囲を定めたのが減圧不要限界です。
そのためにリクリエーションダイビングでは、減圧不要限界を守り、浮上する時はできるだけゆっくりと浮上するのです。しかし、呼気の中に窒素を放出するのが追いつかないほど多くの窒素が血液中にある場合(減圧が必要なほど長く、または深く潜っていた場合)や圧力の変化が大きい場合(急浮上や必要な減圧を無視した浮上など)、血管内で窒素の気化が始まり、血管の中に気泡ができてしまいます。これが減圧症(潜水病)です。
つまり、ダイビング中に血液に溶け込む窒素の量を減らして、その分長く潜るために空気中の窒素を酸素に置き換えたものがナイトロックスです。
ナイトロックスを使用すると、窒素濃度が低い分それだけ減圧不要限界の窒素量に達するまでの時間が長くなります。例えば、空気だと18mに無減圧で潜れるのは56分ですが、32%のナイトロックスを使うと96分潜れるようになります。
ただし、ナイトロックスを使うには酸素中毒に気をつけないといけません。高圧環境で呼吸をすると、気体は体の中に早く溶け込み、普段呼吸している時の何倍もの影響を及ぼすことがあります。その一つが酸素中毒です。
普段私たちはほぼ1気圧の環境で生活していますが、その時の酸素の圧力は「1気圧×21%=1×0.21=0.21気圧」となります。これを酸素分圧0.21ATAといいます。
この酸素分圧が1.6ATAを超えると神経系(急性)酸素中毒の危険性が大きくなることが知られています。そのため、ダイビングでは酸素分圧が1.4ATAを超えないように、配慮が必要です(ただし、減圧の時のように体に負荷のかからない状態では1.6ATAで計算する場合もあります)。
それでは32%のナイトロックスで潜る場合、何メートルまで潜ると1.4ATAに達するか計算してみましょう。
1.4ATA÷0.32ATA=4.375
つまり、水面の4.375倍の気圧がかかる深度=33.75mで1.4ATAになります。
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深度
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絶対圧力
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酸素分圧
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0m
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1気圧
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0.32ATA
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10m
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2気圧
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0.64ATA
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20m
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3気圧
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0.96ATA
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30m
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4気圧
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1.28ATA
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33.75m
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4.375気圧
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1.4ATA
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これを元に通常32%のナイトロックスの深度限界は33mとなります。
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